辨 |
高30-50cm。茎は叢生・直立(基部はやや匍匐)し、上部は分枝し、断面は円形、下部は節の間が短く、毛は無く、つやがある。全体に白緑色を呈する。葉は対生し、柄は無く、広い披針形、長3-5cm、幅3.5mm、先端はやや尖り、基部は狭まって短い鞘となり、節の上を抱く。周囲は細歯があるか或いは全縁。夏に白色或いは紅白色の花を開く(通常は紫紅色ともいう)。花は単生か或いは数個が叢生して集散花序をなす。萼の下に小苞片4-6があり、広卵形、先端は長くとがり、長さは萼管の約半分。萼は長2-2.5cm、萼歯は5。花瓣は5、瓣片は扇状倒卵形、先端は浅く裂けて鋸歯状となり、喉部に深い色の斑紋があり、まばらに毛を生じ、基部は長い爪がある。雄蕊は10、子房上位、1室、花柱2。蒴果は宿存する萼内に包まれ、先端は4裂する(『全国中草薬匯編』・『中薬志Ⅲ』pp.252-256・『中国高等植物図鑑』)。 |
日本で江戸時代に作った品種に、
トコナツ(常夏) var. semperflorens 四季ざき
イセナデシコ(伊勢撫子) var. laciniatus 狂いざき
がある。 |
ナデシコ属 Dianthus(石竹 shízhú 屬)については、カワラナデシコ属を見よ。 |
訓 |
和名セキチクは、漢名石竹の音。
(ただし、『万葉集』時代の日本では、石竹と書いてなでしこと読み、カワラナデシコを指していた。) |
カラナデシコ(唐撫子)とは、やまとなでしこ(大和撫子,カワラナデシコ)に対していう。
カワラナデシコは、日本土産種であるから 古くはたんになでしこと呼ばれた。のちに中国産のセキチクが入ってよりのち、在来種をやまとなでしこ、外来種をからなでしこと呼んで区別した。
清少納言『枕草子』(ca.1000)第67段「草の花は」には、「草の花は、なでしこ。から(唐)のはさらなり、やまと(大和)のもいとめでたし」とある。からなでしこの語の初見は『栄華物語』(11c.末)という。 |
中世以前の文献に現れるとこなつ(常夏)は、カワラナデシコの別称。 |
説 |
中国(東北・華北・長江流域)・朝鮮に分布、中国では 全国で栽培。
日本には、平安時代に入り、江戸時代にはよく観賞用に栽培された。 |
誌 |
中国では、カワラナデシコ或いはセキチクの全草・根を瞿麥と呼び、またその種子を瞿麥子と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅲ』pp.252-256
また、地方により、
D. amtifolia (綫葉瞿麥) 甘肅
D. amurensis (東北石竹) 東北
D. orientalis (東方石竹) 寧夏・新疆・西藏
D. subulifolius (絲葉石竹) 東北
D. versicolor (興安石竹) 東北
などを瞿麥として用いる。 |
湯上りの好いた娘がふくよかに足の爪剪(き)る石竹の花
(北原白秋『桐の花』1913)
|