しゃくやく (芍薬) 

学名  Paeonia lactiflora var. trichocarpa (P.albiflora var.trichocarpa)
日本名  シャクヤク
科名(日本名)  ボタン科
  日本語別名  エビスグサ(夷草)、エビスグスリ(夷薬)、ヌミグスリ、カオヨグサ(顏美草)
漢名  芍藥(シャクヤク,sháoyào)
科名(漢名)  芍藥(シャクヤク,sháoyào)科
  漢語別名  餘容(ヨヨウ,yúróng)、婪尾春(ランビシュン,lánwĕichūn)、將離(ショウリ,jānglí)、可離(カリ,kĕlí)、沒骨花(ボクコツカ,mògŭhuā,もっこつか)、草芍藥(ソウシャクヤク,căosháoyào)、花相(カショウ,huāxiàng)、白芍
英名  Chinese peony, Common garden peony
2007/04/06 薬用植物園

2007/05/10 同上

2008/06/19 薬用植物園

 ボタン属 Paeonia(芍藥屬)は、木本性のボタン類と 草本性のシャクヤク類に分ける。ボタン属を見よ。
 漢名の芍薬(シャクヤク,sháoyào)は、一説に綽約・婥約(シャクヤク,chuòyuē)の諧音、やさしく美しい意。
 
すなわち李時珍は「芍薬、猶お婥約のごとし。婥約は、美好の貌。此の草、花容婥約、故に以て之を名づく」と(『本草綱目』)
 別名、餘容・婪尾春などは、シャクヤクがボタンに約一ヶ月遅れて、晩春にさくことから。
 和名は、漢名の音。
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)芍薬に、「和名衣比須久須利、一名奴美久須利」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)芍薬に、「和名衣比須久須里、又沼美久須里」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』10
(1806)芍薬に、「ヱビスグサ延喜式 ヱビスグスリ和名鈔 ヌミグスリ同上 カホヨグサ歌書 今ハ通名」と。
 学名・英名は、ギリシア神話に出る医者パイオン Paion に由来する。
 東アジア北部(東シベリア・黑龍江・吉林・遼寧・内蒙古・河北・河南・山西・陝西・山東・朝鮮半島)の原産。野生のものは、花の色は白が多い(『中国本草図録』Ⅴ/2089はこれか)
 日本には、平安時代に薬用植物として渡来。
 漢方では、古くから根を薬用にする。『中薬志Ⅰ』pp.181-182,238-242。日本薬局方。
 中国では、同属のベニバナヤマシャクヤク P. obovata(草芍藥・山芍藥・野芍藥・土白芍)、P.veitchii(赤芍・川赤芍)の根も、同様に薬用にする。
 日本では、生薬シャクヤク(芍薬)は シャクヤクの根である(第十八改正日本薬局方)。
 中国では、『詩経』鄭風・湊洧(シンイ)に「贈之以芍薬」の句がある。(ただし、植物学的には別のものとする説がある)
 六朝時代には代表的な観賞用花卉となっていた。唐代以降に鑑賞されるようになったボタンとともに、後世には花中両絶と称えられ、ボタンを花王とし シャクヤクを花相とし、またボタンを木芍薬とし シャクヤクを草芍薬とするなど、ボタンと並んで中国の代表的な観賞花となった。
 曾慥
(?-1155)は 十種の花を選んで十友としたが、そのうち芍薬を■友とする。宋の王観(11c.後半)に『揚州芍薬譜』があり、34種を記す。清の陳淏子の『花鏡』には88種を記す。
 古来、揚州が芍薬を以て著名で、王十朋の「芍薬」詩に「千葉揚州種、春深霸秀芳」と。蘇軾
(1035-1101)は「趙昌芍薬」詩に「揚州近日紅千葉」と、また『東坡志林』に「揚州芍薬、為天下冠」と。秦観(1049-1100)は「有情 芍薬 春の涙を含む」(「春日」)と。
 日本には、平安時代に薬用植物として渡来、『延喜式』に記録がある。延宝年間(1673-1680)以降花を観賞するようになった。
 宮崎安貞『農業全書』(1696)に、「園に作る薬種」の一として「芍薬」をあげ、
 「芍薬は牡丹に相つぎ、和漢古今ともに世人花を賞ずるものなり。殊さら近来都鄙其花を弄ぶ事さかんにして、年を追って其の花しなじな多くなれる事、いふばかりなし。薬種には花の一重なるを用ゆ。白きを白芍薬と云ひ、赤きを赤芍薬と云ふ。医家にしろ芍薬を多く用ひ、赤は只十にして二三も用ゆるとなり。白きを多く種ゆべし。・・・」(岩波文庫本)と。
 
 西方には、オランダシャクヤク P. officinalis(E.Common peony)が、西アジア・南ヨーロッパに分布する。ギリシア神話以来有名な薬草で、名医パイオンはオリュンポスの山から取ったシャクヤクの根を用いてプルトンの傷を治した。
 東アジアのシャクヤクをヨーロッパに紹介したのは、1712年ケンペル。


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