辨 |
ゴボウには、多くの栽培品種がある。 ゴボウの原種の写真は、『週刊朝日百科 植物の世界』1-26に載る。 |
ゴボウ属 Arctium(牛蒡 niúbàng 屬)には、ユーラシアに41-44種がある。
ゴボウ A. lappa(牛蒡) 『中国雑草原色図鑑』229
ヒメゴボウ A. minus(小牛蒡) ヨーロッパ・西アジア・シベリア・北東アフリカ産
ワタゲゴボウ A. tomentosum(毛頭牛蒡) ヨーロッパ・西&中央アジア・シベリア産
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キク科 Asteraceae(菊 jú 科)の植物については、キク科を見よ。 |
訓 |
漢名の蒡(ボウ,bàng)は、葉が左右にひろがる蔬菜。即ちゴボウは牛菜。
惡實(アクジツ,èshí)は、果実の姿形と、刺が多いことから。 |
和名は、漢名牛蒡(ギュウボウ,niúbàng)の呉音から。 |
『本草和名』悪実に、「和名岐多伊須、一名宇末布々岐」と。
『倭名類聚抄』牛蒡に、「和名岐太岐須、一云宇末不々岐」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、「悪実 ゴボウノミ」と。 |
属名は、ギリシア語の arction(モウズイカ)から。 |
説 |
朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江からイベリアまで、広くユーラシア温帯に分布。北アメリカ・オーストラレシアなどに帰化。 |
日本に入ったのは、平安時代以前。福井県三方町にある縄文時代の鳥浜遺跡から、ゴボウの果実が出土したという。 |
誌 |
中国では、むかし根・葉を食用にした。
果実を牛蒡子(ギュウボウシ,niúbàngzĭ)・惡實(アクジツ,èshí)と呼び、根を牛蒡(ギュウボウ,niúbàng)と呼び、葉を大夫葉(タイフヨウ,dàifuyè)と呼び、それぞれ薬用にする。通常は草地や村落の周辺に自生するものを用いるが、しばしば栽培する。『中薬志Ⅱ』pp.47-49 『全國中草藥匯編 上』p.205 『(修訂) 中葯志』III/250-256
日本では、生薬ゴボウシ(牛蒡子)は ゴボウの果実である(第十八改正日本薬局方)。
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宋代の『山家清供』には「牛蒡脯」という料理名が載る。
今日、根を蔬菜として食用にするのは日本・朝鮮半島。
日本では、平安時代の末には宮廷の献立に載っていた。 |
煮染(ニシメ)・葛煮にし、また叩牛蒡・酢牛蒡などにして食う。
たたきごぼう(叩牛蒡)は、「皮をこそげて二寸くらいに切り煮出し汁に入れてやや柔らかくなるまで湯煮し、俎板にとってすり子木などで叩き砕き、山椒醤油をかける」(本山荻舟『飲食事典』)。
牛蒡餅は、叩牛蒡をすりつぶし、糯6・粳4の割で合わせた米粉と砂糖を加えて捏ね、団子にして湯で煮、水をきって胡麻油で揚げ、砂糖を煎じた汁でもう一度煮る(『飲食事典』)。 |
きんしごぼう(錦糸牛蒡)は、針のように刻んだゴボウを、ゴマ油でいためたもの。汁物の具にする。
きんぴらごぼう(金平牛蒡)は、針のように刻んだゴボウを、ゴマ油でいため、醤油・酒で鹹めに煮あげ、トウガラシを振り込んだもの(『飲食事典』)。 |