かぶ 

学名  Brassica rapa var. rapa (B.campestris var.rapa, B.rapa var.glabra, B.campestris var.glabra)
日本名  カブ
科名(日本名)  アブラナ科
  日本語別名  カブラ、カブナ・カブラナ、スズナ(鈴菜)、アオナ、カブダイコン、ウキナ
漢名  蕪菁(ブセイ,wújīng)
科名(漢名)  十字花(ジュウジカ,shízìhuā)科
  漢語別名  蔓菁(マンセイ,mánjīng)、油頭菜(ユトウサイ,yóutóucài)、圓根(エンコン,yuángēn)、根芥(コンカイ,gēnjiè)、葑(ホウ,fēng)、扁蘿蔔(ヘンラフク,biănluóbo)、諸葛菜(ショカツサイ, zhūgécài)、九英菘(キュウエイシュウ,jiŭyīngsōng)、沙吉木兒
英名  Turnip




 
2007/03/21 所沢市本郷
2005/03/02 新座市中野

 アブラナ属 Brassica(蕓薹 yúntái 屬)の植物については、アブラナ属を見よ。
 『言海』に、「かぶら 蕪 〔株(カブ)ニ出ヅ〕・・・又かぶらな、略シテかぶ。蕪菁
」とあり、そのカブについて「かぶ 株 (一)切リ倒シタル木ノ根ノ、土上ニ存スル部。クヒセ」と。
 『大言海』に、「かぶらな 蕪菜〔根莖菜(カブラナ)ノ義、かぶら(根莖)ノ條ヲ見ヨ〕常ニ略シテかぶら、又かぶト云フ。・・・カブナ。カブダイコン。蕪菁」とあり、そのカブラについて「かぶら 根莖〔かぶハ頭(カブ)ノ義、植物ハ根ヲ頭トス、らハ意ナキ辭、らノ條ヲ見ヨ〕株(カブ)ノ古言。植物ノ根ノ脹レタル處ノ稱」と。
 牧野は、「和名かぶハ株ト通ジ頭ノ義ニシテ塊ヲ成スヨリ云フ、かぶらノらハ單ニ語尾ニ附ケテ呼ビ敢テ意義ナシ かぶなハかぶナル菜ノ意ナリ」(『牧野日本植物圖鑑』)。 
 『本草和名』蕪菁に、「和名阿乎奈」と。
 『倭名類聚抄』に、蔓菁は「和名阿乎菜」、蔓菁根は「和名加布良」と。
 『大和本草』蔓菁{カブラ}に、「蕪菁トモ云。・・・菘ニ似テ一類別種ナリ」と。また菘{ナ}に、「京都ノ水菜・ハタケ菜・天王寺菜・近江菜、イナカノ京菜・白菜ナト云物ハ皆菘ナリ。今人多クハ不菘、ホリイリナト訓シ又コヲホ子ト訓ス、皆非也。菘ハ大根ノ類ニハアラス、蕪菁ノ類ナリ、蕪菁ト相似テ一類別物也」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』22 蕪菁に、「カブラ カブラナ カブナ ウキナ カブ」と。
 同じく菘の条に、「ムラサキナ、一名アカナ アフギナ 近江ナ 日野ナ江州 アカゝブラ同上」と。
 古くはスズナと呼ばれて、春の七草の一。  
 『言海』に「すずな 菘〔すずハ小キ義ト云〕たうなニ同ジ、專ラ、春ノ七種(ナナクサ)ニ用ヰル時ノ稱トス」と。そのタウナは、「たうな 唐菜 又、スズナ、ツケナ、フユナ、シロナ。又、單ニ菜(ナ)トノミモイフ。・・・」と。
 『大言海』に「すずな 菘〔小菜(ササナ)ノ義ナラム〕アヲナ。又ハ蕪菁(カブラナ)。專ラ、春ノ七種(ナナクサ)ニ用ヰル時ノ稱トス」と。そのアヲナは「あをな 靑菜 (一)スズナ。フユナ。菘 (二)蕪菜(カブラナ)・・・」と。 
 漢土では、北方では蔓菁(マンセイ,mánjīng)、江東では蕪菁(ブセイ,wúqīng)と呼ぶ。
 漢名の諸葛菜(ショカツサイ, zhūgécài)は、三国時代の蜀(しょく,今日の四川省にあった国)の丞相諸葛亮(しょかつりょう,字は孔明,181-234)にちなむ。優れた軍師であった諸葛亮が、軍隊の食糧補給のために利用した(又はそう伝えられた)蔬菜を 諸葛菜と呼んだ。唐のころには、蜀で蔓菁を諸葛菜と呼んでいたという
(韋絢『劉賓客嘉話録』)。今日の中国では、諸葛菜の名は、カブを指す場合とショカツサイを指す場合と両方がある。
 古い栽培植物。
 原産地は中近東・地中海地方、
アブラナの根の太るものを、根菜として栽培化したもの。
 ヨーロッパでは、ギリシア時代に栽培されており、16世紀からフランス・イギリスなどで一般的に普及した。
 今日では、北日本では西欧系が、西日本では東洋系が栽培されており、境界は福井・岐阜・愛知を結ぶ線(カブラ・ラインと呼ばれる)。
 西日本の各地方には、次のものなど、古来多くの種がある。

  近江蕪(江州蕪・尾花かぶら) 近江産、聖護院蕪の原種
  万木
(ゆるぎ)蕪 近江安曇川産
  日野菜(あかな・えびな) 
近江日野産
  大藪蕪 
近江彦根産
  彦根蕪 
彦根小泉産
  聖護院蕪 
京都産 19c.初に近江より導入 根は径1尺
  酸茎
(すぐき)菜 京都賀茂地方産
  今市蕪 
奈良県産
  天王寺蕪 
大阪天王寺産
  米子赤蕪 
伯耆米子産
  津田蕪 
出雲松江産
  伊予緋蕪(ひかぶら・べにかぶら) 
伊予竹原原産
  据り蕪 
福岡産
   
 漢土では、早く『詩経』の時代には すでに栽培されていた。
 国風・邶風(ハイフウ)の「谷風」に、「葑(ホウ)を采り、菲(ヒ)を采るに、下体を以てすることなかれ」とあり、葑(ホウ,fēng)はカブ、菲(ヒ,fĕi)はダイコン。春には苗を食い、夏には心を食い、秋には茎を食い、冬には根を食うといわれ、重要な蔬菜であった。
 ほかに鄘風(ヨウフウ)・桑中に、「(ここ)に葑を采
(と)る、沫(まい)の東に」と。
 賈思勰『斉民要術』
(530-550)巻3に、「蔓菁」の章がある。元代の『飲膳正要』には沙吉木兒の名で載るが、これは蒙古語の音写であろう、という。
 今日でも北部を中心に広範に栽培されているが、江南では少ない。
 日本では、7世紀末までには栽培されていた(693年、持統天皇は五穀の補助としてこの栽培を奨励する詔を出している)
 若菜の頃から茎葉を蔬菜とし、成熟した茎葉・根は煮熟し或は漬物にして食う。
 千枚漬は、聖護院・天王寺・近江蕪等を用い、旬は11月~3月。 
 『万葉集』に、

   食薦
(すこも)敷き蔓菁(あをな)煮もち来(こ)
      梁
(うつはり)に行騰(むかばき)懸けて息(やす)む此のきみ(君)
         
(16/3825,長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)「行縢・蔓菁・食薦・屋梁を詠む歌」)

 とあり、蔓菁と書いてアヲナと読ませる
(和名抄を参照)

   しぐるゝや田のあらかぶの黒む程 
(芭蕉,1644-1694)

   花と散る身は西念が衣着て    
芭蕉
    木曽の酢茎に春も暮れつつ   
凡兆
     
(『猿蓑』1691。スグキナはカブの一種、根を漬物にし、冬乃至暮春の食物)
 

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