もろこし (唐)

学名  Sorghum bicolor
日本名  モロコシ
科名(日本名)  イネ科
  日本語別名  トウキビ(唐黍)、タカキビ(高黍)、モロコシキビ、コウリョウ、コーリャン、ソルガム
漢名  高粱(コウリョウ,gāoliáng)
科名(漢名)  禾本(カホン,hébĕn)科
  漢語別名  蜀黍(ショクショ,shŭshŭ)
英名  Sorghum, Grain sorghum, Great millet
2004/06/24 薬用植物園
2007/08/07 同上
2009/08/23 岐阜県大野郡白川村

2006/08/12 薬用植物園
2006/11/04 同上

 茎・葉はトウモロコシによく似るが、傷つくと濃紅褐色の斑ができる。
 モロコシ属 Sorghum(高粱 gāoliáng 屬)には、世界の暖地に100種以上がある。

  ブラックソルガム S. × almum(雜高粱)
  S. arundinaceum
栽培モロコシの原種
  モロコシ
(広義) S. bicolor(S.vulgare;高粱)
    サトウモロコシ
(広義) Dochna Group
      サトウモロコシ 'Dulciusculum' (S.saccharatum, S.dochna;蘆粟・甜高粱)
      ホウキモロコシ 'Hoki'(var. hoki;E.broom corn)
    アズキモロコシ Durra Group(S.durra;硬稈高粱)
    コウリャン Nervosum Group('Nervosum', S.nervosum;多脈高粱)
    スーダングラス nothosubsp. drummondii(S.×drummondi, S.sudanense;蘇丹草)
    ヨシモロコシ subsp. arundinaceum(S.arundinaceum)
    ナミモロコシ(モロコシキビ・タカキビ) subsp. bicolor(高粱)
  セイバンモロコシ S. halepense(S.halepense var.propinquum;石茅)
    ヒメモロコシ f. muticum
  モロコシガヤ(広義) S. nitidum(光高粱・草蜀黍)
    モロコシガヤ var. dichroanthum 
    コモロコシガヤ var. nitidum
絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
      シラゲモロコシガヤ f. aristatum
 
    
 イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。
 漢土において古来穀物を表してきたさまざまなことば(文字)については、五穀を見よ。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』19(1806)に、「蜀黍 トウキビ モロコシキビ東国 タカキビ四国 タチギミ津軽 コキビ肥前 ホキビ加州 キミ中国 キビ越後 セイタカキビ同上」と。
 「もろこし」という語について、『言海』にもろこし(唐土)は「〔諸越(ショエツ)ノ地ノ字ヲ文字讀ニセル語カ、或云、諸物、海ヲ越ス意、或云、諸致(モロオコシ)ノ意〕 (一)唐山、即チ、志那ヨリ來レル物事ノ名ニ被ラシムル語。・・・(二)もろこしきびノ略」と。
 『日本国語大辞典 第二版』には、もろこし【唐土・唐】は、「(「諸越(しょえつ)」の訓読みからできた語か。諸越は百越などと同意) 昔、日本から中国をさして呼んだ名称。また、中国から伝来した事物に冠しても用いた。・・・中国の春秋戦国時代に、現在の浙江省を中心として勢力をふるっていた越との交通が盛んであったところから、本来はその地方をさしていたが、しだいに中国全土の呼称となり、唐(とう)・唐土(とうど)と同義化した」と。
 植物の「もろこし」については、『言海』にもろこしきび(唐黍)は「常ニ略シテモロコシ、京ニタウキビ」と。
 牧野は、「和名もろこしハ唐きびノ略、高きびハ其稈高キヲ以テ云フ」と(『牧野日本植物圖鑑』)。  
 アフリカ原産の雑穀 millet。5000年以上前から作物として栽培、古代エジプトに入り、B.C.7c.頃にはメソポタミアで栽培。ヨーロッパには紀元前に入る。
 漢土には、インドを経由して 4世紀以前に伝来、今日では華北・遼寧・吉林・黑龍江が主産地。
 日本には平安時代乃至それ以前のころ伝来(一説に室町時代の伝来)。
 食用のほか製糖用・飼料用・兼用など、多数のさまざまな品種があるが、箒製造専用の品種(ホウキモロコシ)があるのは面白い。
 「ミレットのなかで現在世界経済にいちばん大きな地位を占めるのはソルガム Sorghum vulgare で、「コーリャン」や「モロコシ」の名で日本でもよく知られているものである。ソルガムはひじょうに変異に富み、熱帯の乾燥地で最後の作物となる例はアメリカのアリゾナ・テキサス方面で顕著に認められる。アフリカやインドでは、ソルガムはトウジンビエとともに乾燥地帯の主要作物となっている。・・・ソルガムには、湿度の高いところに適応する系統もある。穂型には大きな変異があり、茎を甘味用に用いる品種などもできている。また皮稞の別にあたる、粒の露出したものと穎に包まれたものとの違いもある。このようにソルガムの品種構成の複雑なことは、じつにコムギ・オオムギ・イネなど大穀物に優るとも劣らないものといえよう」(中尾佐助「農耕起源論」)。   
 宮崎安貞『農業全書』(1696)に、「五穀の類」の一として「蜀黍(もろこしきび)」をあげ、
 「是を唐(もろこし)きびとも、又高くのびぬる故、高黍(たかきび)とも名付くるなり。・・・実を取りて稈(から)をば簾にあみ、筵にうち、又民家の箒にも用ゆべし。或は隣さかいの籬にもたて、其破をふさぎ、米は色々食物に調へ、尤餅にして味よし。殊更性のよき物なり。米も稭(から)も皆すたる物なし。・・・」(岩波文庫本)と。
 「満州ではと共に主食し、高粱酒の醸造材料にするが、米と混炊すれば相当美味なので日本でも粒のまま食用するむきもあり、粉末にしたのはねばりがあり柔らかく団子にして黄粉をまぶし、また汁粉にしても嗜好されるが、ただ冷めると硬くなって風味を喪う」(本山荻舟『飲食事典』)。   
 コーリャン酒は蒸留酒、アルコール度60%以上、一名白乾兒(báigār,パイカル)。 


跡見群芳譜 Top ↑Page Top
Copyright (C) 2006- SHIMADA Hidemasa.  All Rights reserved.
跡見群芳譜トップ ナス オクラ ブルーベリー コマツナ ソバ ナシ 農産譜index