辨 |
果実の形・大きさ・色などに変異が多い。中国では、次の様な変種を区別する。
ヘビナス var. anguinenum
var. depressum(矮茄・鷄蛋茄) 『中国本草図録』Ⅱ/0817
var. esculentum(圓茄)
var. serpentinum |
ナス科 Solanaceae(Solaneae;茄科)には、主として熱帯・亜熱帯に約75-85属 約2000-2300種がある。
(なお、その内40属はアメリカ大陸に産する。)
Anisodus(賽莨菪屬)
A. acutangulus(三分三)『中国本草図録』Ⅷ/3792
A. luridus(賽莨菪・喜馬拉雅東莨菪・三分三)
var. fischerianus(麗山莨菪)『中国本草図録』Ⅷ/3793
A. tanguticus(甘靑賽莨菪)
Archiphysalis(地海椒屬)
A. xinensis(地海椒)
ベラドンナ属 Atropa(顚茄屬)
Atropanthe
A. sinensis(Scopolia sinensis;新莨菪・搜山虎・天蓬子)『中草藥現代研究』Ⅱp.542
ルリマガリバナ属 Browallia 熱帯アメリカに2種
B. americana
B. speciosa
キダチチョウセンアサガオ属 Brugmansia
バンマツリ属 Brunfelsia
トウガラシ属 Capsicum(辣椒屬)
キチョウジ属 Cestrum(夜香樹屬) 熱帯アメリカに約150種が分布
Cyphomandra
コダチトマト C. betacea(E.Treetomato, Tamarillo) メキシコ原産
チョウセンアサガオ属 Datura(曼陀羅屬)
ヒヨス属 Hyoscyamus(天仙子屬)
Lycianthes(紅絲綫屬)
L. biflora(紅絲綫・十萼茄・血見愁) メジロホオズキ Solanum biflorum と同一か、
『中国本草図録』Ⅰ/313
L. lysimachioides(單花紅絲綫)『中国本草図録』Ⅵ/2817
クコ属 Lycium(枸杞屬)
トマト属 Lycopersicon(蕃茄屬)
マンドラゴラ属 Mandragora(茄參屬)
オオセンナリ属 Nicandra(假酸漿屬)
タバコ属 Nicotiana(煙草屬)
アマモドキ属 Nierembergia(賽亞麻屬) 南アメリカに約25-30種
ツクバネアサガオ属 Petunia(碧冬茄屬) 南アメリカに約40種がある
P. altiplana
P. axillaris
ツクバネアサガオ(ペチュニア) P.×hybrida(碧冬茄・撞羽朝顏・矮牽牛・蕃薯花)
南アメリカ原産、『中国本草図録』Ⅵ/2819
P. integrifolia
P. linoides
ヒメツクバネアサガオ P. parviflora 北アメリカ原産
P. pygmaea
P. scheideana
P. violacea
イガホオズキ属 Physaliastrum(散血丹屬)
P. heterophyllum(江南散血丹)
イガホオズキ P. japonicum(日本散血丹・山茄子)
アオホオズキ P. savatieri
P. sinicum(華北散血丹・山茄子)
ホオズキ属 Physalis(酸漿屬)
Physochlaina(泡嚢草屬)
P. infundibularis(華山參・華參・漏斗泡嚢草) 『中国本草図録』Ⅹ/4833
P. macrophylla(大葉泡嚢草)
フクロヒヨス P. physalioides(泡嚢草) 『中国本草図録』Ⅱ/815
P. physolides(泡嚢草)『中草藥現代研究』Ⅱp.542
Przewalskia(馬尿泡屬)
P. tangutica(馬尿泡草・矮莨菪)『中国本草図録』/2786、『中草藥現代研究』Ⅱp.542
ハコベホオズキ属 Salpichroa
ハコベホオズキ S. rhomboidea 南アメリカ原産
サルメンバナ属 Salpiglossia アンデス南部に1属2種がある
サルメンバナ S. sinuata
ムレゴチョウ属 Schizanthus アンデス南部に142種がある
ムレゴチョウ(コチョウソウ) S. pinnatus
コチョウソウ S.×wisetonensis
ハシリドコロ属 Scopolia(新莨菪屬・東莨菪屬)
ナス属 Solanum(茄屬)
ハダカホオズキ属 Tubocapsicum(龍珠屬) 1属1種。
ハダカホオズキ T. anomalum(龍珠・赤珠)薬用
Withania インド・アフリカ・ヨーロッパに約10種が分布。『アユールヴェーダ』で薬用に用いる。
W. coagulans インド・アフガニスタンに分布
W. somnifera インド・アフリカ・地中海地方・カナリア諸島に分布 |
ナス属 Solanum(茄屬)には、次のようなものがある。
東アジア在来種として、
サンゴナス S. aculeatissimum(牛茄子) 『雲南の植物Ⅲ』247
テンジクナスビ S. angivi
メジロホオズキ S. biflorum (雙花紅絲綫・十萼茄) Lycianthes biflora と同一か
S. coagulans(野茄・黄刺茄・黄水茄・黄天茄) 『中国本草図録』Ⅴ/2305・『中国雑草原色図鑑』198
S. dulcamara(歐白英・苦茄・蜀羊泉)
ヤンバルナスビ S. erianthum
テンジクナスビ S. indicum(刺天茄・紫花茄・金鈕扣)
『雲南の植物Ⅱ』230・『中国本草図録』Ⅰ/0317
ヤマホロシ S. japonense(野海茄)『中国雑草原色図鑑』201
S. khasianum(刺天茄) 『中国本草図録』Ⅳ/1840
セイバンナスビ(ヤイマナスビ) S. lasiostylum
ヒヨドリジョウゴ S. lyratum(白英)『中国雑草原色図鑑』198
マルバノホロシ S. maximowiczii
オオマルバノホロシ S. megacarpum
S. myriacanthum(喀西茄) 『雲南の植物Ⅱ』230
イヌホオズキ S. nigrum(龍葵)『中国雑草原色図鑑』199
アカミノイヌホオズキ var. miniatum
テリミノイヌホオズキ S. nodiflorum(S. photeinocarpum;少花龍葵)
『中国本草図録』Ⅱ/0819・『中国雑草原色図鑑』199
S. pittosporifolium(海桐葉白英)
S. septemlobum(青杞・蜀羊泉・紅葵)
S. spirale(旋花茄・旋柄茄)
S. surattense(癲茄・丁茄) 『中国本草図録』Ⅰ/0321
スズメナスビ(セイバンナスビ) S. torvum(水茄)
『雲南の植物Ⅲ』247・『中国本草図録』Ⅳ/1841・『中国雑草原色図鑑』200
ヤンバルナスビ S. verbascifolium(假煙葉樹・茄樹・野茄樹)
『雲南の植物Ⅱ』230・『中国本草図録』Ⅰ/0322
ニシキハリナスビ S. xanthocarpa (黄果茄・大苦茄・野茄果・刺尖果)
『中国本草図録』Ⅰ/0323・『中国雑草原色図鑑』200
外来植物として、
アメリカイヌホオズキ S. americanum 北アメリカ原産
S. aviculare(澳洲茄) オセアニア原産
ワルナスビ(オニナスビ・ノハラナスビ) S. carolinense 北アメリカ原産
キンギンナスビ(ニシキハリナスビ) S. ciliatum(S.aculeatissimum,S.xanthocarpum;
黄果茄) 熱帯アメリカ原産
S. dulcamara ヨーロッパ産
ラシャナス(グミバナス) S. elaeagifolium 北アメリカ原産
アオナス S. gilo(E.Jilo) 中央アフリカ原産か。ナイジェリアで栽培
リュウキュウヤナギ S. glaucophyllum
ヒラナス(カザリナス) S. integrifolium アフリカ原産、栽培ナスの台木とする
キダチハリナスビ S. linnaeanum
アカミノイヌホオズキ(ビロードイヌホオズキ) S. luteum(S.villosum;S.alatum;
S.miniatum) ヨーロッパ原産
テリハナス S. macrocarpon(E.African eggplant) アフリカ象牙海岸・マダガスカルで栽培
ツノナス(キツネナス) S. mammosum(乳茄・五指茄;E.Fox face) 熱帯アメリカ原産
ナス S. melongena(茄)
ムラサキイヌホオズキ S. memphiticum 南アメリカ原産
S. muricatum(E.Peppino,Melon pear) アンデス(ペルー)原産
オオイヌホオズキ S. nigrescens 南アメリカ原産
ヒメケイヌホオズキ S. physalifolium 南アメリカ原産
タマサンゴ(フユサンゴ・リュウノタマ) S. pseudo-capsicum(珊瑚櫻・冬珊瑚・玉珊瑚・
紅珊瑚・珊瑚子) ブラジル原産
ヒメタマサンゴ var. diflorum(S. capsicastrum;珊瑚豆)
S. quitoense(E.Naranjillo, Lulo) エクアドル原産
トマトダマシ S. rostratum 北アメリカ原産
ケイヌホオズキ S. sarachioides 南アメリカ原産
ハリナスビ S. sisymbriifolium 熱帯アメリカ原産
ハゴロモイヌホオズキ S. triflorum 北アメリカ原産
ジャガイモ(バレイショ) S. tuberosum(馬鈴薯・洋芋) |
訓 |
和名は、一説に「為す」であり、よく実がなることからという。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)茄子及び源順『倭名類聚抄』(ca.934)茄子に、「和名奈須比」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)24茄に、「ナスビ ナス」と。 |
説 |
インド原産だが、野生は発見されておらず、S. insanum が原種だろうという。
一説に、インドで野生のナスが発見され、とげが多く、果実は苦い、という。
|
果実が苦くない栽培型は、インドから東方に広がり、B.C.5世紀以前に中国に入る。
のち貿易商人により、5世紀にはペルシア・北アフリカに入り、13世紀にはヨーロッパに入った。
今日では、世界の熱帯・温帯地方で広く栽培されている蔬菜。
|
中国では賈思勰『斉民要術』に既に詳しい記述がある。
日本では正倉院文書(750)に見える。 |
誌 |
根を茄子根・茄根と呼び、薬用にする。 |
「なすびに紫白青の三色あり。又丸きあり、長きあり、此内丸くして紫なるを作るべし。余はおとれり。丸きは味甘く和らかにして肉(み)実(じつ)し、料理に用ひ能く、煮てもみだりにとけくだくる事なし。かうの物其外にも専ら是を用ゆべし。」(宮崎安貞『農業全書』1697) |
「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」とは、秋のナスは味がよいので、もったいないから嫁には食わすな、の意。秋のナスは体を冷やすので(一説に秋ナスは種が少ないので、子種が少なくなるといけないから)嫁には食わすな、の意、とするのは、俗解らしい。
「親の意見となすびの花は、千に一つの無駄もない」とは云うが、ナスの花は1/3~1/10ほどが結実するのみ。 |
春雨やふた葉にもゆる茄子種(なすびだね) (芭蕉,1644-1694)
めづらしや山を出羽(いでは)の初茄子(はつなすび) (同。元禄2年6月10日)
ちさはまだ青ばながらになすび汁 (同)
秋凉し手毎にむけや瓜茄子 (同)
|
初夢に見ると縁起がよいとされる「一富士・二鷹・三茄子」は、一説に富士山は高い、鷹は掴み取る、茄子は成すに通じるから、といい、一説に 駿河の国の名物を並べたもの、などという。 |