辨 |
トクサ属 Equisetum(木賊 mùzéi 屬)については、トクサ属を見よ。
シダ植物については、しだを見よ。 |
訓 |
栄養茎をスギナ、胞子茎をツクシという。
大槻文彦は、「つくし(土筆)」は「つくづくしノ略」と、
「つくづくし(土筆)」は「〔突クヲ重ヌ、突出ノ意〕 杉菜(スギナ)ノ花、・・・ツクシ」と、
「すぎな(杉菜)」は「草の名、・・・先ズ花ヲ生ズ、莖高サ數寸、梢ニ花アリテ、筆ノ頭ノ如シ、コレヲつくづくし(筆頭菜)トイフ、・・・莖ニ節アリ、花、終リテ、葉、生ズ、・・・節毎ニ簇リ生ジテ、杉ノ葉ニ似タリ」と(『言海』)。
牧野は、「和名杉菜ハ其草狀ニ基キテ云ヒ、接ぎ松ハ、小兒其枝ヲ鞘ヨり抽キ又納レテ遊ブ時ノ名ナリ」と(『牧野日本植物図鑑』)。
日本では、ツクシの方言は全国で500以上、スギナの方言は160以上あるという。もって古来親しまれた植物であることが知られる。 |
『大和本草』に、「土筆{ツクツクシ} 土筆ハ國俗ノ所レ名也。春初ヨリ其花先生ス。・・・苗ハ後ニ生ス、杉菜ト云、・・・又松菜ト云フ」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』11(1806)木賊の条に、「問荊 スギナ マツナ筑前 トウナ讃州 ツクノヲバ勢州 ツギマツ土州 マツブキ播州 ツギグサ仙台」「花ノ名ヲ フデツグサ古歌 フデツバナ同上 と云、今ハ ツクヅクシト云、ツクシ東国 ホウシコ豫州 ホウシ雲州 ツクツクボウシ和州 ホシコ讃州」と。 |
漢語では、植物名は問荊(モンケイ,wènjīng)、胞子茎は筆頭菜(ヒットウサイ,bĭtóucài)。
『植物學大辭典』「問荊 スギナ。ツクヅクシ。」に、「一名『接續草』。日本名「杉菜」。又「土筆」。」と。 |
説 |
広く北半球の温帯・暖帯に分布し、日本でも全国いたるところで見られる。 |
誌 |
中国では、全草を乾したものを問荊(モンケイ,wènjīng)と呼び薬用にする。『全國中草藥匯編 上』pp.311-312 |
ツクシは、「食用には成熟前の若茎が適し、摘草の好穫物となっている。・・・土筆の風味は穂にあるのだが、それだけでは量が少ないので袴を取って茎も共に食用する。ざっとゆであげて淡いアク水に放ち、水を切って胡麻和え・胡麻酢和えによく、汁の実にしても風情があり、鍋物の材料に配しても珍賞される」(本山荻舟『飲食事典』)。
スギナは、「嫩葉の間に摘取れば和(ア)え物にしても飯に混ぜても捨て難い趣がある。・・・若くて枝の開かぬ時分に細かく刻んで熱湯を通し、アクを抜いて固く搾り上げたのを醬油で鹹めに炒りつけると、炊立ての飯にまぶしても茶漬の菜にしてもよく、空炒りして薄味噌にあえても風味がある」(本山荻舟『飲食事典』)。 |
「土筆はあまねく世人料理に用ゆ」宮崎安貞『農業全書』(1697)。 |
「セイヨウではワラビの根にあたる救荒植物はスギナ類で、これにつく小型のイモは掘って食べられた記録がある」(中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』)。 |