巻耳
(けんじ)

作品名 巻耳 
収載書名 『詩経』「国風・周南」
訳者名  白川静
訳書名 『詩経国風』(『東洋文庫』518)
刊行年代  1990
 その他  登高望郷の歌。
 
采采巻耳
不盈頃筺
嗟我懐人
寘彼周行

陟彼崔嵬
我馬虺隤
我姑酌彼金罍
維以不永懐

陟彼高岡
我馬玄黄
我姑酌彼兕觥
維以不永傷

陟彼砠矣
我馬瘏矣
我僕痡矣
云何吁矣
 
 
巻耳
(けんじ)を采(と)り采るも
頃筺
(けいきやう)に盈(み)たず
(ああ) 我(われ)人を懐(おも)うて
彼の周行に寘
(お)

彼の崔嵬
(さいかい)に陟(のぼ)れば
我が馬 虺隤
(かいたい)たり
我姑
(しばら)く彼の金罍(きんるい)に酌みて
(ここ)を以て永く懐(おも)はざらん

彼の高岡に陟れば
我が馬 玄黄
(げんくわう)たり
我姑く彼の兕觥
(じくわう)に酌みて
維を以て永く傷
(いた)まざらん

彼の砠
(やまそば)に陟れば
我が馬 瘏
(や)みぬ
我が僕
(しもべ) 痡(や)みぬ
(ああ) 何ぞ吁(うれ)はしき
 
 
みみ菜草 摘み摘むも
かたまにも 盈たずけり
かのひとを 思ひなづみて
道の邊に そをおきにけり
岩山に のぼらへば
我が馬は 色あせぬ
いささかに 酒酌みて
いとしばし 思ひ忘れむ

高山に のぼらへば
我が馬は 色失せぬ
いささかに 酒酌みて
いとしばし やすらはむ

岩山に のぼりたり
我が馬は なやみたり
我がしもべ たゆたひぬ
なぞかくも うれはしき

 詠いこまれた花   ミミナグサ(耳菜草)あるいはオナモミ



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