辨 |
セリ属 Oenanthe(水芹屬)には、次のようなものがある。
O. benghalensis (少花水芹・水芹菜・短輻水芹) 『中国本草図録』Ⅷ/3712・『中国雑草原色図鑑』151
O. dielsii (西南水芹)
var. stenophylla (細葉水芹) 『中国本草図録』Ⅶ/3253
セリ O. javanica (水芹)『中国雑草原色図鑑』149
O. rosthornii (卵葉水芹) 『中国本草図録』Ⅶ/3254
O. rivularis (野水芹・溪岸水芹)
O. sinensis (中華水芹) |
セリ科 Umbelliferae(Apiaceae;繖形科・傘形科)については、セリ科を見よ。 |
訓 |
和名は、若葉が競り合うように成長することから、という。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)水斳に、「和名世利」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)芹に、「和名世里」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』22(1806)水■{艸冠に斳}に、「ツミマシグサ古歌 ネジログサ同上 ネゼリ セリ」と。 |
説 |
日本(全国)・朝鮮・中国(全国)・臺灣・千島・樺太・ウスリー・インドシナ・インドネシア・インド・オーストラリアに分布。
田の畦や湿地に生じる。近年は、水田で栽培することがある。 |
若葉と根茎を食用にする。若葉生品中の成分の百分比は、
蛋白質 1.67
脂質 0.24
糖質 3.12
繊維 0.80
灰分 1.26
など。他にビタミンB、Cを多量に含む。 |
誌 |
中国では、蔬菜として食用にするほか、根・全草を薬用にする。
極めて古くから栽培していたものたとされる。賈思勰『齊民要術』(530-550)には「種蘘荷芹■{草冠に豦}」が載る。 |
日本では、春の七草の一。嫩葉のあくを抜き、蔬菜として食う。また根を賞味する。 |
『万葉集』に、
あかねさすひる(昼)はた(田)た(賜)びてぬばたまの
よる(夜)のいとま(暇)につ(摘)める芹子(せり)これ
ますらを(丈夫)とおも(思)へるものをたち(刀)は(佩)きて
かにはのたゐ(田居)にせり(芹)ぞつみける
(20/4455,4456;727年葛城王と薩妙観命婦の贈答歌)
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西行(1118-1190)『山家集』に、
こぜりつ(摘)む さは(沢)のこおり(氷)の ひま(隙)たえて
春めきそ(初)むる さくらゐ(桜井)のさと
なにとなく せりときくこそ あはれなれ 摘みけん人の 心しられて
(俊秘抄下参照。)
かつすゝ(濯)ぐ 澤のこぜりの 根をしろみ きよげに物を おも(思)はずもがな
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我ためか鶴は(食)みのこす芹の飯 (芭蕉,1644-1694)
芹焼(せりやき)やすそわの田井の初氷 (同)
うすらひやわつかに咲る芹の花 (其角,『猿蓑』1691)
我事と鯲(どじょう)のにけし根芹哉 (丈艸,『猿蓑』1691)
これきりに径(こみち)尽(つき)たり芹の中 (蕪村,1716-1783)
古寺やほうろく捨(すつ)るせりの中 (同)
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