辨 |
イチイ科 Taxaceae(紅豆杉 hóngdòushān 科)の植物については、イチイ科を見よ。 |
カヤ属 Torreya(榧 fěi 屬)には、6種がある。
アメリカガヤ T. californica
T. fargesii(巴山榧樹・球果杉・球果榧・崖頭杉・箆子杉)
シナガヤ T. grandis(香榧・榧・榧樹・野杉・玉榧)『中薬志Ⅱ』pp.457-459
カヤ T. nucifera(日本榧樹)
チャボガヤ var. radicans
ヒダリマキガヤ var. macrosperma
コツブガヤ var. igaensis
ハダカガヤ var. nuda
T. yunnanensis(雲南榧樹) 『雲南の植物Ⅰ』41
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訓 |
和名の語言に、二説がある。①木屑を焼いて蚊遣りに用いたことから。②材に芳香があることから、かへ(香重)の転。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)榧子に、「和名加倍」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)27榧実に、「カヤカヤリニ用ユ、故ニナヅク」と。 |
説 |
本州(宮城以南)・四国・九州・済州島の暖帯林に分布。しばしば神社の境内に植えられている。 |
誌 |
大木の材からは、建築材・器具材・彫刻材などに用いるほか、柾目材からは高級な囲碁盤を取る。
種子は、食用(生でまたは炒って食う)・薬用にするほか、良質な油が取れるので天麩羅油・整髪油にする。カヤの実を食用にするのは先史時代に遡り、静岡県登呂遺跡からイネ・ヒエ・クルミ・クリ・トチなどとともにカヤの実が出土している。 |
中国でも、シナガヤをほぼ同様に用い、材を橋梁・舟車に用い、種子を榧子と、油を香榧油と呼ぶ。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分」に、「柏(かや) 葉形もミのごとし。吉野を上とす」と。 |
かやの木山の
かやの実は、
いつかこぼれて、
ひろわれて。
山家のお婆さは
いろり端、
粗朶たき、柴たき、
燈つけ。
かやの実、かやの実、
それ、爆ぜた。
今夜も雨だろ、
もう寝よよ。
お猿が啼くだで、
早よお寝よ。
(北原白秋「かやの木山の」1922)
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