辨 |
栽培品種のソメイヨシノ(染井吉野) Cerasus × yedoensis 'Somei-yoshino' は、エドヒガンを母とし、オオシマザクラを父とする雑種に由来する一つのクローン。成立した場所、年代、事情は明らかではない。
江戸時代末に武蔵国染井村(豊島区駒込)の植木屋から「吉野桜」の名で売出されて世に出たという。明治期に日本全国に広められた。
(勝木俊雄『桜』2015) |
種間雑種としてのソメイヨシノ Cerasus × yedoensis は、オオシマザクラとエドヒガンの間に生じたすべての雑種個体を云う。エドヒガンに近似するものからオオシマザクラに近似するものまで変異が大きく、次のような園芸品種などがある。
アメリカ 'Akebono'
アマギヨシノ(天城吉野) 'Amagiyoshino'
イズヨシノ(伊豆吉野) 'Izuyoshino'
ミカドヨシノ(帝吉野) 'Mikadoyoshino'
ミシマザクラ(三島桜) 'Mishima-zakura'
モリオカシダレ(盛岡枝垂) 'Morioka-pendula' 盛岡龍谷寺に原木がある
ナニワザクラ(浪速桜) 'Naniwa-zakura'
シダレソメイヨシノ (枝垂染井吉野) 'Perpendens'
ベニヅル(紅鶴) 'Rubriflora' 川崎哲也が真鶴で発見
センダイヨシノ(仙台吉野) 'Sakabai'
ショウワザクラ(昭和桜) 'Showa-zakura'
ソトオリヒメ(衣通姫) 'Sotorihime'
ソメイニオイ(染井匂) 'Someinioi'
ソメイヨシノ(染井吉野) 'Somei-yoshino'
ヤマコシ(山越) 'Yamakoshi'
サクヤヒメ(咲耶姫) 竹中要が三島でソメイヨシノの実生から育成
シュゼンジザクラ(修善寺桜) 竹中要が小石川植物園のエドヒガンの実生から育成
スルガザクラ(駿河桜) 竹中要が三島のソメイヨシノの実生から育成
フナバラヨシノ(船原吉野) 竹中要が伊豆船原峠で発見
ワセヨシノ(早生吉野) 竹中要がエドヒガンとオオシマザクラを交配して育成
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サクラ属 Cerasus(櫻 yīng 屬)については、サクラ属を見よ。 |
訓 |
「和名染井吉野ハ其初メ東京染井ノ植木屋ヨリ擴リタルニ由ル、元來植木屋ニテハ之レヲ吉野ト呼ビ名所吉野山ノ櫻ニ擬シタル美稱ナレドモ斯ク單ニ吉野ト謂ヘバ眞正ナル吉野ノ山櫻ト混雜スルヲ以テ茲ニ明治五年始メテ染井吉野ナル呼名ヲ生ゼシナリ。本種ハ明治維新直前頃ニ始メテ東都ニ出生セシ者ニテ畢竟江戸ノ櫻ニハ非ザリシナリ、故ニ
yedoensis ハ適切ナル種名ナリト言フヲ得ズ」(『牧野日本植物図鑑』)。
一説に、和名は1900博物局天産課員 藤野寄命{ヨリナガ}の命名。 |
漢名を櫻花(オウカ,yīnghuā)というものは、正式にはヤマザクラ P. serrulata。ソメイヨシノを櫻花というのは略称・通称。 |
説 |
花期は4月上旬、葉に先立ってさき、花色は初め淡紅色、のち白色。花つきがよく、全枝が花に覆われる。 |
誌 |
花期の姿が豪華なので、明治時代に東京を中心にひろがった。
現在では全国に植えられており、普通サクラといえばソメイヨシノを指すほどになった。 |
気象庁による「サクラの開花宣言」は、各気象台が定めたソメイヨシノの標本木の花が5~6輪開いた状態の時に行われる。東京都の標本木は、千代田区九段の靖国神社境内にある。 |
近年、てんぐ巣病に罹ることが多く、植栽状況によっては樹勢の衰えが目立ち、他の品種への転換がはかられている。
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