| 辨 |
コナラ属 Quercus(櫟 lì 屬) コナラ亜属 subgen. Quercus(櫟 lì 亞屬)の植物については、Quercus を参照。 |
| 訓 |
クヌギの語源について諸説がある。『日本国語大辞典 第二版』を参照。
『大言海』に、「くぬぎ ■{木偏に國}/椚〔東雅、十六、歷木「景行天皇、其地ヲ御木ノ國ト名ヅケタマヒシニ因リテ、其樹ヲくぬきト云フ、國木ト云フガ如シ」(國處(クニガ)、陸(クヌガ))伊豫ニテハくにぎト云フトゾ〕くのぎ。・・・櫟 櫪」と。[國木については下の誌を見よ。]
牧野は、「和名くぬぎハ國木ノ意ト謂ヒ故事アリ、・・・古名つるばみノ語原ハ二三ノ臆説アレドモ未ダ其確タル正解ヲ見ズ」と(『牧野日本植物圖鑑』)。 |
クヌギの実をどんぐり(團栗)、その古名をツルバミという。その語源についても諸説がある。『日本国語大辞典 第二版』を参照。
『言海』に、「どんぐり 團栗〔橡栗(トチグリ)ノ音便訛ト云フ〕古名ツルバミ」、「つるばみ 橡〔鶴食ノ義ト云〕」と。
『大言海』に、「どんぐり 團栗〔橡栗(トチグリ)ノ音便訛ト云フ〕古名ツルバミ」、「つるばみ 橡〔圓眞實(ツブラマミ)ノ義ト〕」と。
牧野は、「古名つるばみノ語原ハ二三ノ臆説アレドモ未ダ其確タル正解ヲ見ズ」と(『牧野日本植物圖鑑』)。 |
『本草和名』橡實に、「和名都留波美乃美」と。
『倭名類聚抄』に、釣樟は「和名久沼木」と、また挙樹は「和名久沼木」「日本紀私記云、歴木」と。橡は「和名都流波美」と。また櫟子は「和名以知比」、櫟梂は「和名以知比乃加佐」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』26 橡実に、「ツルバミ和名鈔 ドングリ ジザイ但州 ジダンボウ上州 ジダングリ信州、以上実ノ名 クヌギ クノギ クニギ豫州 ウツナ同上 マキ備中 シダミ奥州 ジザイガシ但州 ウバボウ摂州、以上木ノ名」と。 |
| 漢名橡(ショウ,xiàng)・杼(ショ,shù)には二義があり、一はクヌギ、一はトチノキ。 |
| ドングリの別名は、地方によりシダミ、ジザイ、ジダングリ、ジダンボウ、ズンダ、ズンダグリなど多様。 |
| 説 |
本州(岩手山形手南)・四国・九州・琉球・朝鮮・遼寧・華北・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・インドシナ・ヒマラヤに分布。 |
| 誌 |
『爾雅』釈木に、「栩(ク,xŭ)は、杼(ショ,shù)なり。〔柞(サク,zuò)樹なり。○栩は香羽の切、杼は省汝の切。〕」と。
柞は、ナラの仲間の総称。 |
| 賈思勰『斉民要術』(530-550)巻5に「種槐・柳・楸・梓・梧・柞」が載る。 |
| 日本では、樹皮を薬用にし、材を薪炭材・椎茸栽培の榾木(ホダギ)とし、樹皮・果実を染料とした。 |
| 生薬ボクソク(樸樕)は クヌギ、コナラ、ミズナラ又はアベマキの樹皮である(第十八改正日本薬局方)。 |
| 薪炭材として多く用いられ、下総印旛・千葉・埴生三郡に産し佐倉(現千葉県佐倉市)より出荷されるものを佐倉炭といい、摂津一庫(イチクラ)村に産し池田村(現大阪府池田市)より出荷されるものを池田炭・一倉炭といった。 |
| 団栗の笠[梂(かさ);果実の殻斗]の煮汁で染めた黒に近い灰色を橡(つるばみ)という。古代の衣服令では家人・奴隷など身分の低い人が着る衣の色、また喪服に用いた。平安時代には茜(あかね)を加えて、四位以上の袍の色。 |
『日本書紀』巻7 景行天皇18年の条に、「秋七月の辛卯の朔甲午に、筑紫後国(つくしのくにのみちのしりのくに)の御木(みけ)に到りて、高田行宮(かりみや)に居(ま)します。時に僵れたる樹(き)有り。長さ九百七十丈。百寮(つかさつかさ)、其の樹を踏みて往来(かよ)ふ。時人(ときのひと)、歌(うたよみ)して曰はく、
あさしも(朝霜)の みけのさをばし(小橋)
まへつきみ(群臣) いわた(渡)らすも みけのさをばし
爰(ここ)に天皇(すめらみこと)、問ひて曰はく、「是何の樹ぞ」とのたまふ。一の老夫(おきな)有りて曰さく、「是の樹は歴木(くぬぎ)といふ。嘗(むかし)、未だ僵れざる先に、朝日の暉(ひかり)に当りて、則ち杵島山(きしまのやま)を隠しき。夕日の暉に当りては、亦、阿蘇山(あそのやま)を覆(かく)しき」とまうす。天皇の曰はく、「是の樹は、神(あや)しき木なり。故(かれ)、是の国を御木の国と号(よ)べ」とのたまふ」とある。巨木伝説にかこつけた、地名起源説話。後に一説を生じ、ここからこの木が「国木」と呼ばれるようになり、転じて今日のクヌギになった、とする[上の訓を見よ]。
『同』巻11 仁徳天皇58年5月に、「荒陵(あらはか)の松林(まつばら)の南の道に当りて、忽(たちまち)に両(ふたつ)の歴木(くぬぎ)生ひたり。路を挟みて末は合へり」とある。連理の木は 瑞祥。 |
『万葉集』に、
橡(つるばみ)の 衣は人皆 事無しと いひし時より 服(き)欲しく念ほゆ
(7/1311,読人知らず)
橡の 解濯衣(ときあらひぎぬ)の 怪しくも 殊に服欲しき この暮(ゆふべ)かも
(7/1314,読人知らず)
橡の 衣(きぬ)解き洗ひ まつち(真土)山 もとつ人には 猶如かずけり
(11/3009,読人知らず)
橡の 袷の衣 裏にせば 吾強いめやも 君が来まさぬ (11/2965,読人知らず)
橡の 一重の衣 裏も無く あるらむ児ゆゑ 恋ひ渡るかも (11/2968,読人知らず)
くれなゐ(紅)は うつ(移)ろふものそ つるはみ(橡)の
な(馴)れにしきぬ(衣)に なほし(若)かめやも (18/4109,大伴家持)
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櫟の、冬葉のかげをくぐり居りし禽の羽色はふと見えにけり
(島木赤彦『馬鈴薯の花』)
冬の日のかたむき早く櫟原(くぬぎはら)こがらしのなかを鴉くだれり
(1915,斉藤茂吉『あらたま』)
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