さとうきび (砂糖黍) 

学名  Saccharum officinarum
日本名  サトウキビ
科名(日本名)  イネ科
  日本語別名  カンショ・カンシャ(甘蔗)、サトウノクサ
漢名  甘蔗(カンシャ,gānzhè)
科名(漢名)  禾本(カホン,hébĕn)科
  漢語別名  黑蔗、糖蔗
英名  Sugar cane
2011/08/27 富山県薬用植物指導センター

 サトウキビ属 Saccharum 属(甘蔗 gānzhè 屬)には、次のようなものがある。

  ホソサトウキビ S. barberi(S.spontaneum var.roxburgii;細稈甘蔗)
         
インドで栽培
  シロタカオススキ
(ムラサキタカオススキ) S. formosanum(臺蔗茅・臺灣蔗草)
         
臺灣・福建・江西・廣東・海南島産
  サトウキビ S. officinarum(甘蔗)
  オニサトウキビ S. robustum(新幾内亞 xīnjĭnèiyà 野生蔗)
         
ニューギニアに自生、サトウキビの原種
  カラサトウキビ(チクシャ) S. sinensis(竹蔗・草甘蔗)
         
江西・湖南・福建・兩廣・四川・貴州・雲南で栽培 『中国本草図録』Ⅹ/4913
         
1609年奄美大島に渡来 
  ワセオバナ
(広義) S. spontaneum(甜根子草・割手密)
    ワセオバナ var. arenicola(A.arenicola)
         
本州南部の海岸に産 
    var. juncifolium(燈心葉甜根子草) 廣東・海南産 
    var. roxburgii(羅氏甜根子草)
 臺灣産 
    ナンゴクワセオバナ var. spontaneum(甜根子草・割手密)
         
華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南から東南・南・中央アジア・
         アラビア・アフリカに産 『中国雑草原色図鑑』321
   
 イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。
 和名カンショは、漢名甘蔗(カンシャ,gānzhè)の音の転訛。
 『大和本草』沙糖に、「甘蔗ハ・・・沙糖黍ト云ヘリ」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)29甘蔗に、「サトウキビ サトウノキ サトウグサ サトウダケ」と。
 サンスクリット語でシャルカラー sarkara、プラークリット語でサッカラ sakkara といい、学名の属名・英名などはこれに基づく。
 野生種の ① S. robustum は、ボルネオ・ニューギニアなどに分布、② S. spontaneum は、広くアフリカ・インド・漢土南部・東南アジアなどに分布する 。
 栽培品種として、①からは マレーシア・ポリネシアで栽培されていた砂糖黍(E. noble cane)が、②からは インド・漢土南部・東南アジアで栽培されていた砂糖黍 S. sinense が、それぞれ作り出された。今日栽培するサトウキビ S. officinarum は、さらに栽培の2種と野生2種の交雑をくり返して作られたもの。
 今日の中国では、臺灣・福建・兩廣・四川・貴州・雲南で栽培。
   東南アジアでは、根裁農耕文化(「ウビ農耕文化」)の重要作物であった。 
 漢土では、楊孚『異物志』に、「甘蔗、遠近皆有り。交趾に産する所の甘蔗は、特に諄好、本末薄厚無く、其の味至って均し。囲数寸、長丈餘、頗る竹に似る。斬りて食えば既に甘し。汁を迮取して飴餳(いじょう)を為り、之を名づけて糖と曰う。益々復た珍なり。又た之を煎じて曝せば、既に凝り、氷の如し。破りて博棊(はくき)の如くし(砕いて碁石ほどの大きさにして)、之を食う。口に入れれば消釈す。時の人之を石蜜と謂う」と(賈思勰『斉民要術』10引)
 文中、飴餳はサトウキビのジュース、蔗漿(ショショウ,zhèjiāng)。石蜜は氷砂糖(こおりざとう)、氷糖(ヒョウトウ,bīngtáng)。
 日本には、慶長(1596-1615)年間薩摩に入ったという。
 17世紀末に至っても、高価な輸入品であった。
 
「暖国にそだつ物なり。近年薩摩には、琉球より取り伝へて種ゆるとかや。是を諸国に作る事は国郡の主にあらずば、速やかに行はわれがたかるべし。庶人の力には及びがたからん。是常に人家に用ゆる物なるゆへ、本邦の貴賎財を費す事尤甚し。是を種ゆる事よく其法を伝へ作りたらば、海辺の暖国には必ず生長すべし。若其術を尽して世上に多く作らば、みだりに和国の財を外国へ費しとられざる一つの助たるべし。・・・」(宮崎安貞『農業全書』1697)。
 8代将軍徳川吉宗は、千代田城内及び浜御殿内に甘蔗を試作し、かつ葛飾郡砂村・橘樹郡太師河原などに移植し、これより一般に普及した(本山荻舟『飲食事典』)。  
 砂糖(ショ糖)の基原植物はサトウキビ(甘蔗)・サトウダイコン(甜菜)などだが、今日では砂糖の大部分は甘蔗から採られる甘蔗糖である。
 製品として、黒砂糖・赤砂糖・白下糖・ザラメ・三盆白などがあり、再製したものに氷砂糖・角砂糖などがある。
 黒砂糖・黒糖は、「主産地は琉球で早くわが内地に伝わり、九州・四国などにも生産する。・・・優良品には特殊の風味があるので羊羹・餡その他上等の和菓子にも使用され、好事家の賞美するところとなっている」(本山荻舟『飲食事典』)。
 しろした(白下)は、「白下地糖の略称で、甘蔗を搾って煎糖した半流動性の含蜜糖。古く四国・奄美大島・琉球・小笠原島に産し、・・・昔はそのまま菓子用・調理に供し、白砂糖もこれから精製した・・・」(本山荻舟『飲食事典』)。
 さんぼんじろ(三盆白)は、「結晶粒のこまかい白砂糖。・・・在来法で製したものを和三盆(ワサンボン)と称し、風味がすぐれているので上等の和菓子に用いられる。・・・三たび盆上にもんで精白するのが語源だという」(本山荻舟『飲食事典』)。  
 こおりざとう(氷砂糖)は、「結晶体の大形な砂糖。・・・そのまま菓子として食用し、梅酒・桃酒その他料理、製菓に応用される。・・・未結晶の母液を氷糖蜜といい、そのままでも使用される」(本山荻舟『飲食事典』)。  
 キャラメル caramel は、砂糖を加熱して褐色に焦したもの。古くはカルメイラ・カルメラ・カルメルなどとも称した。漢名は焦糖(ショウトウ,jiāotáng)。
 日本には天文年間ポルトガル人により渡来、氷砂糖・卵白から作った。  
 アルヘイ(有平)糖は、水溶きした氷砂糖を煮詰めて飴のように引き延ばしたもの(本山荻舟『飲食事典』)。名はポルトガル語 alferoa から、アルヘールとも。化政以後、平面形で意匠を凝らした飾り菓子として普及し、雛祭に供えられた(本山荻舟『飲食事典』)。  
 こんぺいとう(金平糖・金米糖)は、「氷砂糖を水に溶かして煮詰めたところへ小麦粉を加えた中に罌粟の実を入れ、一粒ずつにまぶしつけてかき回しながら加熱すると、漸次盛上るにしたがって前面に稜形の角がでぎ」たもの(本山荻舟『飲食事典』)。ケシの実は、昔はゴマの種を用いた。名はポルトガル語の confeito から。  
   
 さとうづけ(砂糖漬)は、果物・蔬菜などを砂糖に漬けて貯蔵するもの。漢名は蜜餞(ミツセン,mìjiàn)・蜜煎(ミツセン,mìjiān)。日本では天門冬夏橙文旦生薑百合など、中国では青梅蓮実・蓮根などが漬けられる。
 『大和本草』沙糖に、「砂糖煎(ヅケ) 佛手柑生薑天門冬冬瓜葡萄金橘等、皆煎スベシ、蜜煎ハマサレリ」と。 
 
   いつのまに刈り干しにけむ甘蔗黍
(さとうきび)刈り干しにけむあはれもず啼く
     
(北原白秋『桐の花』1913)
 
 
 著者(嶋田)の記憶では、長野県東筑摩郡波田村では1950年代サトウキビかサトウモロコシかを自家用に栽培していた。盛夏の畑仕事の最中に、この茎を切り、皮を剥いて芯を咬んだ。みずみずしく、甘かった。 

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