| 辨 | ナズナ属 Capsella(薺 jì 屬)には、北アフリカ・ユーラシアに1-7種がある。 
 ナズナ C. bursa-pastoris(薺)
 ナズナ var. triangularis
 ホソミナズナ var. bursa-pastoris
 オオバナナズナ C. grandiflora
 ルベラナズナ C. rubella
 
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            | ハクセンナズナ属 Macropodium(長柄芥屬・古芥屬)・イヌナズナ属 Draba(葶藶屬)・マメグンバイナズナ属 Lepidium(獨行菜屬)・グンバイナズナ属 Thlaspi(菥蓂屬・遏藍菜屬)は、いずれも別属。 | 
          
            | アブラナ科 Brassicaceae(十字花 shízìhuā 科)については、アブラナ科を見よ。 | 
          
            | 訓 | 「和名ハ撫菜(なでな)ノ意ニテ愛(メ)ヅル菜ノ意ナル乎ト謂ヒ明解ナシ、ぺんぺん草ハ其果實三味線ノ撥ニ似タル故其音ヲ取テ斯ク云フ」(『牧野日本植物圖鑑』)。 別の説に、ナズナは夏無(なつな)の転訛、夏には枯れて無くなるので。またペンペングサは、果実が風に揺れたときの音から。
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            | 『本草和名』薺に、「和名奈都奈」と。 『倭名類聚抄』薺に、「和名奈都那」と。
 『大和本草』に、「薺{ナツナ}」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』薺に、「ナヅナ バチグサ古歌 メナヅナ奥州 シヤミセングサ スモトリグサ越後 ペンペングサ江戸 ピンピングサ讃州 ムシツリグサ仙台 カニトリグサ豊後」と。
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            | 漢字の薺は、薺(セイ,jì)と読めばナズナ、薺(シ,cí)と読めばハマビシ。 なお、熟語には次のように用いる。
 薺苨(セイデイ,jìnĭ,せいねい):ソバナの仲間、A. trachelioides(薺苨)。
 薺薴(セイドウ,jìníng,せいねい):ヒメジソ・ミゾコウジュ。
 荸薺(ボツセイ,bíqí・bíqì):シナクログワイ。
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            | 説 | 広く全世界の温帯に分布。 | 
          
            | 誌 | 中国では、今日まで若い茎葉を蔬菜として食う。 また、全草を薺菜(セイサイ,jìcài)と呼び、花序を薺菜花と呼び、種子を薺菜子と呼び、薬用にする。 『全国中草葯匯編』上/613-614
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            | 『詩経』国風・邶風(はいふう)・谷風に、「誰か荼(と)を苦しと謂ふ、その甘きこと薺(なづな)の如し」と。 | 
          
            | 日本では、春の七草の一。 「羹(あつもの)とし、あへ物、ひたし物に用ひてよし。・・・種子を取り蒔きたるは殊更うるはしく味もよし」(宮崎安貞『農業全書』1697)。
 「早春の候 羽状に欠刻のある根生葉を取って食用する。正月の七草粥にはほとんど代表のごとくなって今も用いられるほか、ゆでて和え物・浸し物にし、また細かく刻んで汁の実にすると一種の風味があり、・・・」(本山荻舟『飲食事典1958)。
 
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            | ふるきいも(妹)が その(園)にうゑたる からなづな
 たれ(誰)なづさへと おほ(生)したつらん
 (西行(1118-1190)『山家集』恋百首)
 
 よくみれば薺(なづな)花さく垣ねかな (芭蕉,1644-1694)
 古畑に薺摘行(つみゆく)男ども (同)
 よもに打(うつ)薺もしどろもどろ哉 (同。「人日」)
 一とせに一度つまるゝ菜づなかな (同)
 「人日」は陰暦正月七日の称、春の七草の誌を見よ。
 
 宵の月西になつなのきこゆ也 (如行,『猿蓑』1691)
 (宵の月は6日の月。7日は人日。なづなは薺を叩く音)
 
 妹が垣根さみせん草の花咲ぬ (蕪村,1716-1783)
 
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