さといも (里芋)
学名 Colocasia esculenta (C.antiquorum var.esculenta) 日本名 サトイモ 科名(日本名) サトイモ科 日本語別名 イモ、タイモ(田芋)、ハタケイモ、イエツイモ(家芋)、タロイモ、シロミグサ、ツユトリグサ 漢名 芋(ｳ,yù)、芋頭(ｳﾄｳ,yùtóu) 科名(漢名) 天南星(ﾃﾝﾅﾝｾｲ,tiānnánxīng)科 漢語別名 芋艿(ｳｼﾞｮｳ,yùnăi)、毛芋(ﾓｳｳ,máoyù)、蹲鴟(ｿﾝｼ,cúnchī)、莒(ｷｮ,jŭ) 英名 Taro, Old cocoyam
| 辨 サトイモ科 サトイモ属 訓 説 タロイモ 誌 |
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| 辨 |
サトイモ科 Araceae(天南星 tiānnánxīng 科)には、主に世界の熱帯･亜熱帯に約115属 約3000種がある。 Aglaonema(廣東萬年靑屬) 漢土南部･インドシナ･マレシア･ニューギニアに約25種 シモフリチク A. brevispathum(A.hospitum;短苞粗肋草) シラフイモ A. commutatum(斜紋粗肋草) A. costatum(心葉亮絲草･心葉粗肋草･爪哇萬年靑) ヒトスジグサ 'Immaculatum' セスジグサ 'Maculatum' A. modestum(廣東萬年靑･大葉萬年靑) 『全国中草葯匯編』下/14-15 シラフチク A. pictum(斑葉亮絲草･斑葉粗肋草) アサヒリョクチク A. robeleynii マルバセスジグサ A. rotundum(圓葉亮絲草) リョクチクイモ A. simplex(越南萬年靑) ハクチク A. treubii クワズイモ属 Alocasia(海芋屬) コンニャク属 Amorphophallus(魔芋屬) Anadendrum(上樹南星屬･杯被藤屬) 中南米に800種以上 ベニウチワ属 Anthurium(花燭屬) テンナンショウ属 Arisaema(天南星屬) Arum(疆南星屬) 広く歐亞･北アフリカ･アゾレス諸島に26種 ニシキイモ属 Caladium(五彩芋屬) 熱帯アメリカに約12種 C. bicolor(五彩芋･花葉芋)アマゾン流域産 『全国中草葯匯編』下/268 ヒメカイウ属 Calla(水芋屬) サトイモ属 Colocasia(芋屬) Cryptocoryne(隱棒花屬) 四川･貴州･雲南･マレシア･インドに約50種 Cyrtosperma(曲籽芋屬) 東南アジア･太平洋諸島に約12種 キルトスペルマ C. edule C. lasioides(曲籽芋) C. merkusii(C.chamissonis) カスリソウ属 Dieffenbachia(黛粉芋屬･花葉萬年靑屬) 熱帯アメリカに約30種 ハブカズラ属 Epipremnum(麒麟葉屬) 漢土(南部)･マレシア･インドに約20種 ハブカズラ E. pinnatum(Rhaphidophora pinnata;麒麟葉) 琉球･臺灣･兩廣･雲南･マレシア･インド･フィリピン･太平洋諸島に産 Gonatanthus(曲苞芋屬) マレシアに2種 ハルユキソウ属 Homalomena(千年健屬) 印度･マレシア･メラネシア･熱帯アメリカに約110種 セントンイモ H. kelungensis(臺灣千年健) 臺灣産 H. occulta(H.tonkinensis;千年健･一包針) 兩廣･雲南産 『中薬志Ⅰ』pp.64-66 『全国中草葯匯編』下/90-91 フィリピンセントンイモ H. philippinensis アカジクセントンイモ H. rubescens ヒメウキクサ属 Landoltia(斑萍屬) Lasia(刺芋屬) 熱帯アジアに2種 L. spinosa(刺芋･勒芋･刺茨姑) 臺灣･兩廣･雲南･ヒマラヤ･インドシナ産 『全国中草葯匯編』下/368-369 アオウキクサ属 Lemna(浮萍屬) ミズバショウ属 Lysichiton(沼芋屬) ホウライショウ属 Monstera(龜背竹屬) Orontium(水金杖屬) 北米東岸に1種 ビロードカズラ属 Philodendron(喜林芋屬) ハンゲ属 Pinellia(半夏屬) ボタンウキクサ属 Pistia(大薸屬) オオキノボリカズラ属 Pothoidium(假石柑屬) 臺灣･フィリピン・東マレシアに1種 ユズノハカズラ属 Pothos(石柑屬) 約80種 ユズノハカズラ P. chinensis(P.cathcartii;石柑子･石蒲藤) 大東島･臺灣･兩廣･湖北･四川･貴州･雲南･ベトナム･ラオス･タイ産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)『全国中草葯匯編』下/182-183 タコイモ属 Remusatia(岩芋屬･零餘芋屬)アフリカ･アジア･太平洋諸島の熱帯に4種 ヒメハブカズラ属 Rhaphidophora(崖角藤屬) アフリカ･アジアの熱帯･亜熱帯に約120種 R. hongkongensis(獅子尾･巖角藤･水底龍) 『全国中草葯匯編』下/129 福建･兩廣･貴州･雲南･インドシナ･アッサム産 サキシマハブカズラ R. korthalsii(顯脈崖角藤) 琉球･フィリピン･東南アジア産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020) ヒメハブカズラ R.liukiuensis(針房藤) 琉球･臺灣･フィリピン産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020) ヘビイモ属 Sauromatum(合管蓮屬) 熱帯アフリカ･アラビア･印度･漢土南部に2種 ヘビイモ S. venosum(Typhonium venosum;斑龍芋) コウトウイモ属 Schismatoglottis(落檐屬) 東南アジア･熱帯アメリカに約100種 コウトウイモ S. calyptrata(S.kotoensis, Colocasia kotoensis; 廣西落檐･紅頭芋･蘭嶼芋) 臺灣産 Scindapsus(藤芋屬) 熱帯アジア･太平洋諸島に約30種 S. officinalis(藥用藤芋･靑竹標) 雲南産 『全国中草葯匯編』下/349 ササウチワ属 Spathiphyllum(白鶴芋屬) 東マレシア･太平洋諸島･熱帯アメリカに41種 ウキクサ属 Spirodela(紫萍屬) Steudnera(泉七屬･香芋屬) 雲南･ベトナム･ビルマ･インドに8-9種 ザゼンソウ属 Symplocarpus(臭菘屬) アオミバカズラ属 Syngonium(合果芋屬) 中南米に35種 リュウキュウハンゲ属 Typhonium(犂頭尖屬)東南アジアを中心に約40-50種 リュウキュウハンゲ T. blumei(犂頭尖) 鹿児島･琉球･小笠原･臺灣･福建･廣東･東南アジア･インド産 『週刊朝日百科 植物の世界』11-84 『全國中草藥匯編』上/118,230,793 T. flagelliforme(鞭檐犂頭尖･戟葉犂頭尖･水半夏) 『全国中草葯匯編』下/126-127 兩廣･雲南･熱帯&亜熱帯アジア･濠洲東北部産 T. giganteum(獨角蓮･禹白附･白附子) 河北･山東･山西･陝甘･四川･貴州･チベット産 『中薬志Ⅰ』pp.173-177 『全国中草葯匯編』上/628-629 キンジコ T. roxburgii(金慈姑) 雲南産 T. trilobatum(馬蹄犂頭尖) 兩廣･雲南･インドシナ･インド･マラヤ産 ミジンコウキクサ属 Wolffia(無根萍屬) ミジンコウキクサ W. globosa(無根萍･微萍) 日本では本州関東以西･九州･琉球に分布 センニンイモ属 Xanthosoma(黃肉芋屬) 中南米に約57種 X. brasiliense 葉を食用 X. sagittifolium(E.Yautia) イモを食用、今はフィリピンでも栽培 ソテツバカイウ属 Zamioculcas(雪鐵芋屬) アフリカ中南部に1種 オランダカイウ属 Zantedeschia(馬蹄蓮屬) アフリカに8種
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| サトイモ属 Colocasia(芋 yù 屬)には、東アジア南部･インドシナ･マレー･ヒマラヤに8種がある。 C. affinis(卷苞芋) 雲南･ヒマラヤ･ミャンマー･インド産 ヤマサトイモ C. antiquorum(C.esculenta var.antiquorum;野芋･鐵芋) 江南･インド･マレシア･メラネシア産 『中国本草図録』Ⅹ/4919 IPNI によれば C.esculenta のシノニム トウノイモ var. toonoimo(C.toonoimo;紫芋) 中国各地で栽培。『中国本草図録』Ⅶ/3406 サトイモ C. esculenta(芋;E.Taro) 'Black Magic' 観葉用の品種 エグイモ 'Eguimo' ズイキ 'Rosea' ミズイモ var. aquatilis(C.konishii, C.formosana, C.antiquorum var.aquatilis; 臺灣靑芋･紅芋) 臺灣産 C. fallax(假芋･山芋･野芋頭) 雲南･ヒマラヤ東部･インドシナ産 ハスイモ C. gigantea(Leucocasia gigantea;大野芋) 福建･江西･兩廣･雲南･ビルマ･マレシア産 『中国本草図録』Ⅱ/0903･『週刊朝日百科 植物の世界』11-90 C. lihengiae(李氏香芋) 雲南･ベトナム産 C. menglaensis(勐臘芋) 雲南･インドシナ産 |
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| サトイモには、次のような品種がある(本山荻舟『飲食事典』)。 エグイモ(花イモ･縞イモ) 美味だがえぐみが強い。 唐の芋 親芋は大、えぐみが無く美味。子芋は少ない。酉の市で売られたもの。 八つ頭(九面芋) 親芋は大きく、粉質で美味、子芋は極少。 青芋 多く栽培される代表種。青茎･赤茎がある。 青茎：早生イモ･豊後イモ･土垂(ﾄﾞﾀﾚ)イモ(鳩ケ谷イモ)･石川イモ･六月イモ･女イモ 赤茎：赤芽イモ(熊野イモ)･海老イモ･田イモ イモもズイキも赤茎系が美味。 白イモ(ツユイモ･ハスガラ) 葉柄が長大･美味。 |
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| 訓 | サトイモ(里芋)･タイモ(田芋)は、ヤマイモ(山芋)の対。 | |
| 日本･中国などで利用･栽培される主要なイモについては、いもを見よ。 | ||
| 漢名の芋(ｳ,yù)は、大きなサトイモを見て、人々が「おおっ、ううっ」と驚いたことから、という。 莒(ｷｮ,jŭ)は、イモが連なっている様子を表す。 蹲鴟(ｿﾝｼ,cúnchī)とは うずくまったフクロウ、芋の形が似ていることから。 |
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| 『本草和名』芋に、「和名以倍都以毛」と。 『倭名類聚抄』芋に、「和名以毛」と。 小野蘭山『本草綱目啓蒙』芋に、「イヱツイモ和名鈔 シロミグサ古歌 ツユトリグサ同上 イモ」と。 |
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| サトイモの葉の柄を干したものをいもがら(芋幹･芋茎)と言い、生のものをずいきと言う。 〔里芋の茎をズイキということは無窓国師(疎石)の歌に「いもの葉に置く白露のたまらぬは、これや随喜の涙なるらん」とあるのから始まったという〕(本山荻舟『飲食事典』)。 大槻文彦は、「ずゐき(芋苗) 〔假名遣サダカナラズ、隨喜ニ寄セテイヘル文アリトイヘバ此ニ收メヌ、或ハ窠引(ｽﾋｷ)ノ義ニテ窠アリテ引乾スベキ意ナリトモイフハ、イカガ〕」と(『言海』)。 |
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| タロイモのタロ taro は、マオリ語などから英語に入ったもの。 | ||
| 説 | 東南アジアでは、サトイモ科の次のような植物の根茎をタロイモ taro と呼び、古くから食用にする。(〇印は農耕上重要なもの)。 〇ヤマサトイモ Colocasia antiquorum(C.esculenta var.antiquorum;野芋･鐵芋) ハスイモ Colocasia gigantea(Leucocasia gigantea;大野芋) 〇キルトスペルマ Cyrtosperma edule 〇Cyrtosperma merkusii(C.chamissonis) Cyrtosperma lasioides 〇インドクワズイモ Alocasia macrorrhizos(熱亞海芋) シマクワズイモ Alocasia cucullata(尖尾草･尖尾芋) Alocasia denudata Alocasia indica Lasia spinosa(刺芋･勒芋･刺茨姑) キンジコ Typhonium roxburgii(金慈姑) Typhonium trilobatum(馬蹄犂頭尖) コウトウイモ Schismatoglottis calyptrata(Colocasia kotoensis;廣西落檐･蘭嶼芋) Schismatoglottis wallichii Homalomena spp. 東南アジアでは、根裁農耕文化(｢ウビ農耕文化｣)の重要作物であった。 なお、タロイモ類の中で最も低温に耐え、温帯にまで北上したものはサトイモのみ。 |
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| サトイモ Colocasia esculenta(芋)は、インド東部～マレシア原産。 大変に古く中国･日本･太平洋諸島などに伝えられた。西方に向かっては、A.D.500年ころインドネシア人によりマダガスカル島に入り、やがて西アフリカに達した。ローマ時代には南ヨーロッパへ入る。コロンブス以後、西インド諸島に入る。 今日では、広く世界の熱帯･亜熱帯で栽培している。 |
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| 日本には、南方民族の移住とともに(稲作以前に)もたらされた最も古いいも。 多くの品種がある。 |
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| 誌 | 中国では、賈思勰『斉民要術』(530-550)巻2に、「種芋」の章がある。 | |
| 日本では、サツマイモ･ジャガイモが渡来する以前には、芋といえばサトイモを指し、主要な食料であった。また葉柄をずいき･いもがらと呼び、生や乾燥したものを蔬菜として食用にする。 |
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| イモは生で酢の物に、また含め煮･うま煮･田楽などにして食用。 芋棒は、サトイモ(海老芋が適する)と棒鱈の併せ煮、京都名物。 昆布煮は、精進料理の逸品。 |
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| 「きぬかづき(衣被) 芋子(ｲﾓﾉｺ)ヲ皮ノママニ煮(ﾕ)デタルモノ、煮デテ熟スレバ、皮、自ラ脱ス、十三夜ノ觀月(ﾂｷﾐ)ノ節物トス」(『言海』)。 「きぬかつぎ(衣被) ･･･里芋の子を皮つきのまま、鹽をふりかけて蒸しまたはゆでたもの。親指の頭で逆にこすると容易に皮が剥けるのを、そのまま口にする風味がよく、仲秋名月の夜の献立になくてはならないものとされ、また土のついたまま貯蔵して年を越させたものが花見時にも用いられる」、「子イモや孫イモを皮つきのまま蒸したのはキヌカツギと唱え芋名月の一景物である」(本山荻舟『飲食事典』)。 なお、芋名月とは、旧暦八月十五日の満月、所謂仲秋の名月。 芋(サトイモ)を供えることからいう。豆名月(ダイズの誌を見よ)の対語。 |
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| 芋田楽は、里芋･八つ頭･唐芋などの親芋･子芋とも、皮をむいて適宜に切り、煮るか蒸して竹串に刺し、擂味噌を塗って炙ったもの(本山荻舟『飲食事典』)。 | ||
| いもめしは、里芋の子芋を適宜に切って塩を加え、茹でて炊きたての飯に混ぜる。または、米･里芋を一対一で共に炊き上げる。またヤマノイモをあられに切って米に混ぜて炊くところもある。今日では、芋飯というと普通はサツマイモと思われるようになった(本山荻舟『飲食事典』)。 | ||
| ズイキ･イモガラは、煮物･和え物などにする。 ズイキを干したものを関東で干ずいき、関西で割菜と呼び、備荒食とする。 |
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| 葉柄を「縦にさいて乾燥したものを、関西地方では割菜(ﾜﾘﾅ)という。ながく貯蔵にたえるので古来備荒食または軍糧として重んじられ、加藤清正の熊本築城に際しては城壁の間に塗りこめたとか、畳の芯に用いたなどの伝説もある」(本山荻舟『飲食事典』)。 | ||
| 『万葉集』に、 蓮葉(はちすは)は是くこそ在るもの意吉麿が家にある物はうも(芋)の葉に有るらし (16/3826,長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)｢荷葉を詠む歌｣) |
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種芋や花のさかりに売ありく (芭蕉,1644-1694) いも植て門(かど)は葎(むぐら)のわか葉哉 (同) いものはや月待(まつ)さとの焼(やき)ばたけ (同) 月に名を包みかねてやいもの神 (同) 芋洗ふ女西行ならば歌よまむ (伊勢の「西行谷の麓に流あり。をんなどもの芋あらふを見るに」、芭蕉『野ざらし紀行』1684) 庵の月主をとへば芋掘に (蕪村,1716-1783) 五六升芋煮る坊の月見かな (同) |
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| 諺に「芋の煮えたもご存じ無い」とは、そんな簡単なことも知らない世間知らず、の意(平野雅章『食物ことわざ事典』1978)。 |
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